43 はじめに 小学生の頃,たかしよいち先生 の『日本人のなぞをさぐる』と いう本を読んで,古代史の世界に すっかり魅了され,それ以来,「考 古学者になるぞ!」というのが私 の将来の夢となりました。 それがどういうわけか,心理学 の道へ進むこととなり,しかも大 学入学時分は心理学のことなどま るで理解していなかったので,新 入生歓迎会で自己紹介をした時に は,軽々にも「将来は古代日本人 の心理を研究したいです」と口 走ってしまいました。後日,その 話を伝え聞いた某先輩から「古代 日本人の心理を研究するいうて も,被験者みんな死んでおらへん がな!」とツッコミを入れられま した。今思えば,たしかにその通 りだなと思います(苦笑)。 とにもかくにも,「古代史好き」 という流れから,昔の遺跡や伝承 地,由緒ある神社などを訪ねた り,古墳を巡ったりするのが趣味 となりました。とりわけ,今住ん でいる奈良県は古墳の宝庫でもあ り,巡るネタには事欠きません。 木の生い茂るこんもりとした丘を 見かけると,「おお,古墳や!!」 と,まさに「古墳にコーフン」状 態に陥ります(ベタなオチですみ ません)。 古墳は1人でも巡りますが,こ こ8年ほどは,大学に「はにわっ こ倶楽部」という非公認サーク ル(?)を設立し,同僚の先生や 職員さん,大学院生,学部生,卒業 生,その他ゆかりのある人たちと ともに,奈良や大阪を中心に数々 の古墳を巡り歩いています(写真 参照)。もっとも,純粋に古墳を 楽しんでいるのはごく一部のよう で,ほとんどのメンバーは「みん なでわいわいできるから」,「運動 不足の解消になるから」,「『部活』 の後の飲み会が楽しみだから」 と,全く別の動機で参加している ように見えなくもないのですが。 古墳の魅力 ところで,多くの人にとって, この趣味はどうにも奇異に感じら れるようで,「一体何がおもしろ いの?」と,いつも怪訝そうに聞 かれます。「何が?」と言われて も,そんなに深く考えたことはな かったのですが,改めて考えてみ ると,やはり「ワクワク感」では ないかなと思います。古墳を眺め ていると,「今から千数百年も前 に,ここで人々がどんな営みをし ていたのだろう」,「舗装もされて いなかった道を,みんなでえっち らおっちらと土や石を運び,どん なことを考えながら,あんな大き なものを造ったのだろう」,「当時 の こ の 辺 の 景 色 は ど う だったのだろ う」……など など,いろん なことをあれ これ夢想する と,何かしら その時代と一 体化したかの ようにワクワ クしてきて, そのワクワク感が堪らないのだろ うと思います。この感じは,なか なか言葉で上手く説明できませ ん。 仮に理解してもらえたとしても, 「別に古墳でなくても,寺院や城郭 でもいいじゃないの(むしろそっち の方が自然?)」と言われるかもし れません。しかし,やはり古墳でな いとダメなのです。なぜダメなの か。おそらく古墳の場合,被葬者も わからず,築造の年代や方法などが 必ずしも明確ではなく,なぜあんな 形や大きさなのかも不明で……と, あまりにも謎に満ちあふれているこ と。そして,人工物でありながら自 然の産物のように見えて,何となく 神秘的であること。さらには,多く の古墳が神話の世界とリンクして いること。こういったことが想像の 自由度を広げさせ,私を非現実の世 界へと誘い込むのかもしれません。 今もこの原稿を書きながら,次の 日曜日に行く古墳のことを考えて います(ちなみに,奈良の纏向遺 跡周辺へ行きます)。今度はどんな 世界に引き込まれていくのやら。
心理学ワールド 78号 心理学ライフ 古墳はそそる 水野 邦夫(帝塚山大学) | 日本心理学会
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